大学講師も兼ねる高名な建築デザイナーの故・宮脇檀さんによるエッセイ集です。
氏のモノに対する考え方の最大の魅力は、目で見て美しいと感じることの大切さと、使いやすく理にか
なっていると感じることの必要性が非常にバランス良く両立している点だと思います。
前者の美意識は、長女の彩さんによる前書きで回想される父の逸話(子供の頃、オモチャをねだって
も「デザインが悪いからダメ」と却下されたり、マヨネーズをチューブのまま食卓に出させなかったり・・・)
でまさにその人となりが窺えますし、後者のモノの使われ方の考えは単に使い勝手という直接的なもの
に留まらずに、「家を設計するということは建て主の注文通りに寸法を合わせて部屋を配置して屋根を
付けて・・ということではなく、住む人がそこでどんな生活をするのか、どのような生き方をしたいのかを
把握した上でその器を作ること」という意識にまで昇華されています。
このエッセイ集では上記のような「デザイナーとしての感性」と「建築家としての機能美の意識」を高い
レベルで兼ね備えているプロフェッショナルの考え方を、とても易しい言葉で僕たちにいわば講義して
くれている、そんな印象を受ける一冊です。
個人的に一番惹き込まれたのは最終章の「航空をデザインする」で、今まで高速性の犠牲にされてき
た居住性の見直しを建築デザイナーならではの視点から提案していく内容が非常に興味深いです。
表紙カバーの折り返しにある本文の抜粋と前書きで、どんな感じの本かある程度は感じ取れると思い
ますので、書店等で手に取れる場合はサッと目を通してみてはいかがでしょうか?
五ッ星評価:★★★★☆