2007年2月23日に急逝した著者の、亡くなる直前1年間に週刊誌に連載されたエッセイをまとめたもの。以前から、そのあまりの生への執着のなさに驚き、歯に衣着せぬ毅然とした物言いや、思索がすべてと言い切る潔さにある意味憧れていた著者の突然の訃報でした。そして、本当に自身の死を予感して過ごされたであろう最後の日々に、どんなことを考えていたのか、それを知りたくて購入。
連載の性質か、内容は軽めのものが多く、また私のように「最後の日々」に関する特別な記述を求めるとやや肩すかしを食うかもしれません。実際これまでの著作で読んできたような内容の章もあります。しかし、今回は季節ごとの徒然なるままに綴られたといったそのままの構成が、かえって読後に余韻を残します。「生に執着のない哲学者の目を通して見たこの世界」が、とても美しく、愛おしく感じられます。
「最終的には、この『自分』というものをこそ、捨ててしまいたいのだ。完全に姿を消して、そんなものはいないかの如くに振る舞う。……そして、自分が死んだということすら気がつかないぐらいに自分がいなくなった時、人生と存在の本当がわかるのだ。どうしてもそんな気がする。」(本書36ページ)と書いた著者ですから、きっと今も思索を続けておられるでしょう。常々、「体験してみないことには絶対にわからない」と言われていた実際の「死」についても、もしかしたら何か素晴らしいことを発見されたかもしれない。しかし、悲しいかな、この世にある私たちには、それを知る手段がなくなってしまった。合掌。