Braless and Slightly Slack(ブラなしでちょっぴりゆったり)とはビル・ブラフォードがこのアルバムに当時付けたものだが、ふざけているようで実は的を射ている表現だ。このアルバムリリース当時、このアルバムのほぼ半分がライブ録音であることなど誰も知らなかった。今のファンなら知っているが、当時のクリムゾンでは新曲はライブでまず試され、変化していった。また、インプロビゼーションの比重がどんどん大きくなるリスキーなステージをこの当時のクリムゾンは行っていた。既存の曲をスタジオでかっちりと録音するのではなく、日々変化を続ける、予測のつかない実験的なステージそのものがアルバムになっていったわけだ。そういった意味で本作品は、「太陽と戦慄」と「レッド」の狭間のアルバムとして地味な存在であるが、インプロを武器に既製の表現を突き抜け、より自由な領域に到達したクリムゾンの実力と本質が最も垣間見えるアルバムだと思う。
さて今回の40周年リマスターだが、同時に発売されたディシプリンと同様、ここ最近のリマスターの恩恵をかなり受けている感がある。各楽器、特に低音部の粒立ちが良く、音に空間が感じられる。平坦だった音が、立体的になったような印象だ。特にWe'll let you know や The Mincer 以降のライブ音源はその印象を今までのものと大きく変え、ライブのステージをそのまま聞いているような臨場感がある。また、CDにはボーナストラックがつき、Track 9 - 11はThe Mincer のインプロの完全版と言っていいだろう。鬼のような演奏だ。Track 12のDr. Diamond はアルバム未収録だが、4枚組ライブアルバムThe Great Deceiver にも収録されていた、ファンにはお馴染みの当時のステージナンバー。この音源は初出だと思うが、手堅い演奏。Track13Guts On My Side は一度しか演奏されなかったらしい幻のナンバーだが、フリップ先生が貴重な資料だと判断して今回入れたのだろう。几帳面な人だ。
あとはDVDの映像は1973年のNYのライブ映像、これはファンの中には観た者も多いと思うが、(昔、ロバート・フリップのCareful with that Axeというビデオで一部収録されたが)今回正規で完全版として観られたのは感慨深い。というか他の曲の映像は無いの? また、紙ジャケもエンボス紙のものと、シボ加工?のものと2種類です。ディシプリンと同様、芸が細かいというか、担当の人が相当のクリムゾナーなのか、紙ジャケの職人さんのこだわりなのか、頭が下がります。 輸入盤が確かにリーズナブルですが、ここまでされては日本版を買うしかないでしょう。
こうなってくると、リリースが遅れている「太陽と戦慄」の期待が高まりますが、同時にこの40周年記念版の音質の良さを考えると、なんで「レッド」だけ2004年リマスター版なのか、今更ながら恨めしくも思えます。