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暗夜行路 (新潮文庫)
 
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暗夜行路 (新潮文庫) [文庫]

志賀 直哉
5つ星のうち 3.2  レビューをすべて見る (14件のカスタマーレビュー)
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登録情報

  • 文庫: 582ページ
  • 出版社: 新潮社; 改版 (1990/03)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4101030073
  • ISBN-13: 978-4101030074
  • 発売日: 1990/03
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.2  レビューをすべて見る (14件のカスタマーレビュー)
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苦しみの鏤刻 2005/6/14
『暗夜行路』は色々な要素が複雑に絡まり合った巨大な作品ですが、「赦し」は本作における主要なモティーフの一つだと思いました。自我の絶対的な肯定を前提にしているだけあって「赦す」ことの倫理学的妥当性が自明のものとして問われることはありませんが、そのような検討の必要性をまったく感じさせないあたりも志賀文学の強さなのかもしれません。もっとも赦しの実現によって作品が閉じられるわけではなく、むしろ未解決のまま未来に託されていくことで、この問題が安易に解決され得ない生涯にわたって追い続けるべきものであることが示されるのです。
一語一語苦しみ悶えながら刻みつけられたであろうことが明白な文章に、私はある種の畏敬の念を覚えずにはいられませんでした。最初に読み始めたのは社会での複雑な人間関係に悩んでいた二十代はじめで、辛くてとても読み通せませんでした。恥ずかしながら三十も近くなってようやく読了したのですが、感慨は複雑で、人間であること、人間であり続けることの言葉にならない厳しさに圧倒されて、まとまった感想を持つことができないでいます。
志賀の作品は「私小説」「心境小説」などといわれる我が国特有のジャンルに分類されます。この系統の作品は色々形を変えて書き継がれていますが、残念ながら質は低下するばかりで、現在では先行作品を読まずに誰でも書ける薄っぺらなカラオケ文学の台頭を許している状態です。私小説の衰退は純粋に作家の才能に帰すべき問題ですが、残念ながらジャンルそのものへの批判に繋がることも多く、本作のような古典的名作を必要以上に敬遠させる要因にもなっています。
大江健三郎や谷崎潤一郎の作品のように物語を追求した文学は確かに面白い。でも、虚飾を排し人間の存在をそのまま鏤刻したような文学も素晴らしいものです。若い人たちも食わず嫌いせずに、こうした作品の本質的な素晴らしさを知って頂きたいと思います。
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 志賀直哉という人は「スーパーエゴイスト」だとどこかの学者が言っていました。実際「それは僕の知った事ではありません」とか「あなたはそれでいいよ。然しこっちまで一緒にそんな気になるのは御免だ」といった風に、<自分さえ良ければいい>という感じが少なからずします。主人公が他人の歪みに怒ったりするところもあちこちある、小説全体は何というか大体一本槍形式でストーリーの変化はやや乏しい、そんな風に言うとろくな小説じゃないように思われるけど、「罪を罪のままに押し通している女の心の張り、その方に彼は遥かに同感が起こるのであった」とか、「心で貧乏する、これほど惨めな事があろうかと彼は考えた」といった風ないわゆる「自我肯定」はそれなりに良さがあります。
 それに、作者も全然自己批判をしないわけではありません。428Pを見ればわかります。
 そして、自我肯定とともに、自然に対する一種謙虚とも思える感性が光っています。
 おそらくこの作者は、ストーリー展開などより詩人的な文章の洗練にその本領があります。大山の風物の描写はなかなか凄いです。しかも、漱石ゆずりかと思われる、人間本位文明に対する批判も、何か先駆的なところがあります。
 私小説という形式は、自信のある人間が適しているかもしれません。ウジウジ悩む人間の私小説は、暗くて読む気がしなくなるだろうというものです。
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17 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 大岡昇平がこの作品を近代文学の最高峰と評価していたので、そこまでなら……という訳で読み始めました。はっきり言って最初は何が書いてあるのかさっぱり理解できませんでした。しかし、後で著者の作品をいくらか読んで解ったのですが、他の純文学作家に比べても志賀直哉は主義主張が弱いようです(少なくとも私はそう思いました)。それでも、かなり完成度が高い作品だな、と感じます。

 文体が無駄のない、鮮やかな描写の文章だということは間違いなく、解説でも著者の朋友達がその文章に感嘆していたということが書かれています。志賀直哉の様な文章が書けないので作家になる事をあきらめた、という人がいるくらいですからよっぽどです。しかし、そういわれてもあまり誇張の様に感じません。小説の神様といわれるだけの事はあるでしょう。

 作品の方は前述しましたように、主義をはっきりとつかむことは難しいです。大筋は、あらゆる苦難や困難を受け、それに対して自らの理論と価値観をもって、乗り越えようとする、そういうところでしょうか。所々で鮮やかな描写や、同感したくなる考えが出てきて、とても長い小説ですが無理なく読めます。

 ただ、人にとってはだらだらと書いていて何が言いたいか解らないという事になるかも知れません。三島由紀夫とかが好きな方にはあまりお勧めできませんね……。

 でも、こういう種類の小説がある、という意味でも読んでみてはいかがでしょう? 小説に対して違った見方が出来るようになると思います。
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