暗号の歴史を分かりやすく解説するだけでなく、ドラマチックに見せてくれる本書。
素因数分解という意味不明な(僕にとってですが)数学的テクニック(?)を初めて
現実に役立つ物として見せてくれた本書。必読!
有名な「シーザー暗号」に始まり、第二次大戦中ドイツの暗号機エニグマを通り
現代のコンピューター通信に用いられるRSA暗号に至り、さらには次世代の暗号テクニック
(実際には既に使用されているかもしれないが)量子暗号まで。
本書の案内に従って読み進めてゆけば、僕のような数学のずぶの素人にも
(とりあえずは)暗号の歴史とそのテクノロジーを理解する事ができる。
しかも人間同士の、暗号制作者と、解読者との知恵比べのドラマは読み物としても上々の出来だ。
この文庫本版の良さは、原書から約十年の月日が流れたため、
追補として現在(2007年)の暗号の現状を挙げてくれているところだろう。
なんと、作者が量子コンピューターの登場を待たねば解読不能と断じた、
RSA暗号を用いた暗号システムDESが現在では解読可能といえるまでになっているのだ。
素因数分解を利用したこの暗号方式は、地球上全てのコンピューターを稼働させても、
一つのメッセージを解読するまで千年かかると言われていた。
十年の時間はコンピューターの速度を飛躍的に向上させてだけでなく、数学のルール上あり得ない
と言われていた素因数分解の近道を発見させるまでに至ったようだ。
まったく、まったくもって人間同士の知恵比べには驚嘆させられる!
さて、本書には原著と同じ暗号例題が巻末に付録している。
文庫版で残念なのは、それらの懸賞付き十問がすでに破られている事だろうか・・・・。
しかし僕はと言えば、その知恵比べに参加どころか、
舌を巻いて見守り、尻尾を巻いて降参するしかない。