著者のあさのあつこさんは多くのベストセラーを出した後も、
人と情報が渦巻く東京ではなく、生まれた地の岡山県美作(みまさか)市で日々を過ごしているらしい。
美作は、国道沿いにはショップが並ぶ市街地もあるが、一歩入れば静寂が包む田舎的風景もふんだんにある。
お米や水がおいしくて、東京じゃいくらお金を払っても味わえない。すごく豊かなところ。それが私の印象。
その美作市を舞台にしたと思われる「東湖市」に住む中学生の女の子が主人公。
現国で日記を書く宿題が出され、体育の授業でサッカーをして楽しかったと書くような、どこにでもいる普通の女の子。
でもある日、黒い闇の影を見たように感じ、その日から、彼女を取り巻くいろいろなものが急に激しく動き出す。
怖い何かに巻き込まれ、とまどい、悩む。
だけど、大好きな自分の街を、家族を、そしてみんなを守りたい…彼女は精一杯、闘おうとする。
優しい心ゆえ、闘うことに悩む彼女を見たおばあちゃんは、彼女にこう言った。
…おまえの優しさは「救い」となるかもしれない…「闘うためじゃなく、救うために生まれてきた」…と。
この作品を読んで、80年代、私が高校生の時に読んだ
幻魔大戦(角川文庫)を思い出した。
高校生の男子が、ある日超能力に目覚め、「正義と悪」や「仲間」について思い悩み、
また、「自分だけがなぜ闘うのか」という問いに、心がつぶれそうになりながらも
“サイキックソルジャー”として超能力をフル稼働させて戦う、ってストーリー。
映画化もされた。
一方「暗き夢〜」は女性作家の作品だけあって、超能力が飛び交う手に汗にぎる展開というのとは違う。
おそらくあさのさんは、自分の子どもに語り聞かせてあげるような感じで、この作品を書いていったのだと思う。
等身大の心をもつ主人公と同年代の中学生が、日常の、通学途中の電車の中とかで読むってのが一番合ってる。そんな感じ。
でも、東京の中学生は、あまりに混んでて電車の中じゃ本なんか読めないか…お気の毒。