幻の傑作なんて作品は、読んでみるとたいしたことがないと感じることが多いものです。時代が過ぎてしまった為に同時は斬新であったものが、ありきたりなものになってしまったこともあるし、読者にそれなりの教養が必要とされる場合もあって、実はものすごいものを秘めているのだが一部の読者以外には伝わらない場合もある。それは当然で誰が読んでも「おお、すごい」と感じられる作品が長らく絶版で古書店でも手に入らない、値段が高騰するというのは不自然なのです。例えば、同じ作者の『幽霊の2/3』は面白いとは思うが大騒ぎするほどの作品とは思えません。通好みではあるが、誰が読んでの感心するといった作品ではないというが、私の印象。
ところが、「暗い鏡の中に」はそうした一般論は通じないようです。扱っているテーマや作品の雰囲気からして中学生ぐらいのちょっとロマンチックな女の子が読んだら,えらく感心する感激するといった印象すらある。上手い例えではないが、ミステリ、SF、怪奇小説といったたぐいのジャンルが好きな人にとっては、実に興味深いテーマを扱っているのです。個人的な印象にすぎませんがこの手のジャンルが好きな人にとって普遍的な面白さをもっているので、クリスティの諸作のようにいつでも手に入るということは、無理だとしても10年に一度位は、再版してもよかったと思うのですよ。自分が持っている早川文庫版が昭和52年発行になっている。2版されなかったとすると、30年はとっくに過ぎている。早川さん・・・こまったものです。いうなら、「幻の作品」にされてしまった作品。今回は、創元社に発行が移っている。いいことかもしれません。イメージに過ぎませんが創元社の方が定期的に定評がある作品、話題になる作品は再版してくれる感じがするので。
今回、創元版を購入して20年ぶりの再読しましたが、できがいいですね。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、品行方正に見える女教師がいきなり、理由も告げられずに解雇される。中盤になってようやく理由が明らかになるのですが、引っ張るなぁという印象。前段のこの部分が読者を不安に駆り立てて素晴らしいです。さらに理由が明らかにになると、理由があまりといえばあまりなのでさらに読者が不安になってくる。おい、おい、これ本格ミステリだよなぁ??うーんちがうのかぁ・・・と云った感じに??・・・ううう、ほんと上手いわぁ。
さらに終盤、謎解きになりロジックが炸裂する。ウィリング博士と博士が一連の出来事の黒幕だと指摘した人物の対決が始まる。探偵がこう言えば、その人物もこう言い返す。すざまじいディベートの応酬。さてさて・・・いかなる結末をむかえるか?同一の仕掛けを扱った作品の有名なあの作品がありますが、個人的には、「暗い鏡の中に」のほうが衝撃的。とにかく読みなされ!!