結城昌治は日本ミステリにおける偉大なパイオニアであり、その業績は再評価されなければならない。
日本版「EQMM」の短編コンテストで佳作入選し、洒落たユーモア・ミステリ「ひげのある男たち」で長編デビュー。
本邦初の本格的なスパイスリラー「ゴメスの名はゴメス」、悪徳警官ものの傑作「夜の終る時」(推理作家協会賞受賞作)、
渥美清主演で映画化もされた愉快なコンゲーム物「白昼堂々」とその多彩さと完成度の高さは驚きですらある。
そして私立探偵 真木(名は明らかにされない)を主人公とする本作こそ、日本において初めて登場したリアリティを持ったハードボイルド・ミステリである。
ロス・マクドナルドの強い影響を感じさせるが、昭和30年代の成熟と腐敗の気配を見せ始めた日本社会の暗部と悲劇を描写した、その世界は古びていない。
「公園には誰もいない」「炎の終り」と続く本シリーズは必読だ。