1942年の作品。フレッド・アステアにとっては、1930年代のジンジャー・ロジャースとのコンビ解消後、パートナーを変えて新しいスタイルを模索していた時期に当たる。その後、『バンド・ワゴン』など、MGMミュージカルでの第2の黄金期があるのだが。
この映画、ストーリーとしては実に他愛のないもの。
アステアはニューヨークの人気ダンサー役。休暇でブエノスアイレスにやって来て、好きな競馬で負けてしまい、地元のホテルのショーに出演して一稼ぎしようとするが、変わり者のホテルのオーナーとケンカになり、ドタバタしているうちに、ふとした誤解から、オーナーの娘(リタ・ヘイワース)に惚れられて…、というようなお話。
アステア作品の魅力は、歌(アステアは歌手としても超一流)と華麗なダンスの「芸の力」で、単純なストーリーを、観客に楽しく見せるところにある。この映画でも、アステアとリタ・ヘイワースの仲が進展するポイントで、必ず歌とダンスがうまく使われていて感心する。その意味では、この映画は、アステア作品の基本をしっかり押さえた佳品だと思う(傑作というほどでもないが)。
そして、この映画には、"Shorty George"という名ナンバーがある。フレッド・アステアとリタ・ヘイワースが一緒に歌い踊ったこのナンバーは、私は個人的に本当に大好き。
アステアのトレードマークとされている、トップハットと燕尾服は、彼自身は「堅苦しくて大嫌い」だったそうだが、"Shorty George"は、それとは正反対、いたってカジュアルな楽しいナンバーだと思う。
アステア自身が本当に踊りたかったのは、こういうカジュアルなダンスなんじゃないかなあ、という気がするほど素直に楽しい。