「景福宮の秘密コード」というタイトルが、いかにも他の小説を連想させるようで、期待半分で手に取った本だった。読み始めのおどろおどろしさもあり、数ページ読みかけて置いておいた本でもあった。
しかし、思い切って続きのページをめくってみると、びっくりの面白さでとまらず、そのまま夜通し上・下巻一気に読み切り、いく日か読み返し、すっかり世界にひたる日々だった。
副題の「ハングルに秘められた世宗大王の誓い」、こちらを宣伝文句に持ってきた方がよいのではと思う位、タイトルで損をしている気がする。原題の「根の深い木」では伝わりにくいと思われたのかもしれないけれど…(読後は原題に納得なのだが)。
ミステリーとして見ると、緻密という面では粗があるようにも思う。史実だけでなく、フィクションの部分もあるだろう。ありがちな設定も見受けられるかもしれない。
しかし、主人公チュユンを始め、周りのキャラクターたちが泥臭くて生き生きしているところが何とも惹かれるのだ。自分の想像力を喚起させてくれるような、読ませる勢いがこの本の魅力だと思う。
事件の真相を暴いていくだけでなく、いろんな人物の思いがパズルのように浮かびあがっていく。人間ひとりの存在は、歴史の中では塵芥に過ぎないのかもしれないが、多くの人々の真剣な思いや命がけの努力があり、確かに今や未来に繋がっていくのだと、読後胸打たれた。
ただし、人物の名前をカタカナで追っていったり、場所の名前をつかむのが少々手間がかかったが、巻頭の登場人物紹介と巻末に地図があるので、それらを照らし合わせながら読んでいき、繰り返し読むごとに、なるほど!と発見するところがあったのも面白かった。
旅行など、何時間か時間をかけて一気に読みたいなぁと思われる際には、ぴったりの本ではないだろうか。また、ハングルを習い始めの方にも、感動があるのではと思うので(私がそうだったので)、おすすめである。
始まりは乗り気でなくとも、この本との出会いのように、後から驚かせてくれる面白い本に、また巡りあいたいものである。