日本は「失われた10年」という長期停滞にあり、ようやくここ数年「景気回復」を経験していた。しかし最近のエコノミストたちの予測では、すでに日本は不況局面に嵌っており、政府もようやくその事実を渋々認めた。サブプライム危機やこれから起るであろう世界不況に先んじて、日本はすでに景気悪化を経験しているのである。それが世界不況によってよくなることはありえず、一段の悪化が今後予測される。
だが日本の「景気回復」でさえ実感できるものではなかったのではないか?
「経済格差」(都市と地方、大企業と中小企業、そして正社員と非正社員との所得格差)は深刻になってきたといわれ、そして「景気がいい」といわれている業種や企業で働いていた人たちでさえ、「自分の懐はそんなに暖かいのだろうか、むしろ石油や食料品の高騰でますます生活が苦しくなっているだけだ」と思っていただろう。
もちろん「景気が悪い」といわれている業種や企業、そして非正社員の人たちはさらに深刻だろう。なんでこんな実感のない「景気回復」が起きてしまったのだろうか。そして実感のないままいまや日本は不況に陥り、それがさらに今回の世界不況で深まるかもしれない。だがどれだけ悪化するのかだろうか? 不安は尽きない。
このように日本の景気をめぐる問題は、今日の経済問題の多くを覆うものであろう。そして上記したすべての疑問に、本書は答えを提起することに成功している。
世界不況はどのくらい日本に影響するのか
そのわかりやすい解説と鋭利な分析は、最近出版された経済ものの新書の中では出色の成果である。しかも読者自身が、手計算でも(もちろんエクセルや計算機を使えばより容易に)景気の今後の動向を数値として知る手法まで紹介している。本書の付論に収録された「イワタ流景気動向指数の見方」がそれである。イワタ式は内閣府がホームページ上で公表しているコンポジット・インデックス(CI)という景気動向指数を用いたものである。
このCIには景気の動きに先行すると考えられる先行系列、景気の動きと一致する一致系列、さらに景気の動きに遅れて反応する遅行系列がある。CIは景気の強弱を定量的に計測しようというもので、いわば景気の勢い(景気拡張や景気後退の度合い)を伝えるものである。例えば今後、世界不況がどのくらい日本経済を悪化させるのか、その度合いを知るのにちょうどいい指数だ。
著者はこのCIの先行系列の6カ月前・対比年率を景気予測で重視しているという。確かに本書の説明をみると、CIの予測精度は高い。このイワタ流の景気予測を用いると、日本経済は〈〇六年一〇月頃から、景気は踊り場状態にあったが、〇七年一一月頃、あるいは、遅くとも〇八年三月には景気後退に入った〉と判断できる。
これは重要な指摘だ。なぜなら本書の予測(僕はそれを全面的に支持する)をもとにすれば、日本の景気後退は、海外の要因(サブプライム問題の顕在化は昨年の夏である)に先行して、日本独自の要因によってもたらされたと思われるからだ。この日本独自の要因とは何か? その答も本書には用意されている。