「なぁ兄貴、いつか僕も誰かを迎えに行って、歌を歌った思い出を残してやることが出来るのだろうか」
(「雨の中の軌跡」より)
『白紙の散乱』がすごく良かったので、こちらも読んでみました。
ファンの贔屓目ではなく、尾崎の文学的才能には本当に驚かされます。
彼のファンではない人にも十分に勧められる作品だと思います(人は選ぶかもしれませんが)。
この本は、以下7つの短篇からなっています。
変貌:愛している彼女を殺そうとする話
たたずむ瞬間:場末の酒場のピアニストとそこに集う人々の話
ファースト・フード:付き合って間もないカップルの可愛らしいデートの話
LOVE WAY:覚醒剤に溺れながらも真理と愛を求める青年の話
フェアリー・ウィスパー:拘留中の青年がある女性歌手の歌から安らぎを得る話
普通の愛:離婚しようとしている夫婦の話
雨の中の軌跡:登校拒否の少年と家族とのちょっとほのぼのとした話
少しでも参考になればと無理矢理に粗筋を書いてみましたが、この本の魅力は文章そのものの発する光にあって、ストーリーはあってないようなものと言ってもいいくらいです。
覚醒剤やら拘留中やら離婚やら登校拒否やらと決して明るくない題材ばかりなのに、読むとなぜか心がすっきりする。
心をむき出しにした文章と、あまりに真っ直ぐに人生と向き合っているところに爽快さのようなものを感じるからかもしれません。
なんだか疲れちゃったなぁ・・・というときに読むと、不思議な精神安定剤になってくれそうな本です。