著者は空自出身の異色外務官僚。手嶋龍一「1991年日本の敗北」にも登場する人物である。
普天間移設問題を3期に分節化し、詳細に迷走の経緯をたどる労作といえる。
海兵隊がなぜ、沖縄に駐留しなければならないのか?なぜ県内移設(辺野古沖)でなければならないのか?
に関して、詳論している(反面、キャンプシュワブ陸上案であるとか、民主党案には仮借ない批判を加えている)。
日米間の交渉の経緯、海兵隊基地の有機的連関機能を分厚く説明しており、資料的価値が高い。
もっとも、幾つかの疑問点がある。
沖縄県側とくに名護市側が埋立て案になぜ、固執するのかについて説明が明確とはいえない点。
シュワブ陸上案に「固執」した守屋元防衛次官について、ゼネコン利権への配慮を重視していたと
示唆している点(本書261ページ)がそれである。
巻末にインタビューに応じた当局者のリストが付されているが、こうした疑問点との関連で
本書の視点には一定のバイアスを感じざるを得ない。
一方当事者である守屋元防衛次官の「普天間交渉秘録」(新潮社)と併読して読み進めることを特に、
お勧めしたい。
沖縄の声に配慮する、とは一体どの声に配慮することなのか?
この点について真摯に考えていたのは誰なのか?
基地被害を直接被る人々へのケアではなく、なぜ、地域振興にカネがつぎ込まれてしまうのか?
このような疑問点への言及がなされれば、本書の価値はさらに増していたと思われる。