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最も太宰らしい本と言えばこの「晩年」を挙げたい。よく作家は処女作を越えられないというが、この一冊の短編集に太宰のエッセンスはすべて詰まっていると思う。
結局、今から思い出してみると、太宰の屈折した自己愛と自分のそれとが共鳴現象を起こしていたのだなということがわかる。しかし、それはそれで一種の癒しになっていたのだと思う。心理療法の先駆者と言われる何とかいうローマの医者は憂鬱に悩む人には憂鬱な詩を聞かせ、躁状態の患者には勇ましい詩を聞かせて癒したという。そういう効果が、太宰の作品にはあると思う。
太宰は30までに卒業するべきものだと誰かが言ったそうな。私もそう思う。自分にとりついている自己愛のヴェイルをはがし、等身大の自分をうけ入れるとき、人は太宰を卒業するのだと思う。私は3回にわたる内観でそれを達成した。遅い卒業だった。
苦しい時代を見守ってくれた太宰治に対してはただ感謝あるのみである。本当に気の毒な人だったと思う。「ありがとう、そして、さよなら」。ありふれているが太宰に対して贈りたい言葉である。
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