専門外だが、しかし一般常識と言っても良い知識に余りに無頓着、というのが第一印象です。
例えば、「時は金なり」という言葉を最初に使ったとされるベンジャミン・フランクリンが「5シリングの価値を無駄遣いすれば5シリングを失う」と勤勉を勧めていることに対して、著者は「儲ける可能性のあった架空の金額を損失になぞらえ、あたかも損失を被るような言い方」で「論理のすりかえ」だと反応しています(P.179)。少しばかり経済学や経営学の知識をかじった方なら「それは『機会費用』のことじゃないの!」とツッコミを入れることでしょう。続けてフランクリンが「君の思慮深さと正直が人々に知られているとすれば、年々6ポンドの貨幣を100ポンドにも働かせることができる」と「与信創造」について述べていると思しきところに、借り手は「ちょっとした小細工を弄し巧みな演出を試み」貸し手に返済期間を引き伸ばさせる、とネガティブなコメントをしています(P.180)。フランクリンは、彼の時代から現在に至るまでありとあらゆる所で行われた金銭貸借についての常識を述べているだけだ、と思いますが。
それぞれの章もどのような役割を担っているのか判りづらく、またそれを貫くテーマも見出しがたく全体の構成も漫然としています。個々のエピソード、例えば明治末年に至っても小学校では正確な時を刻む時計がなかなか配備されていなかった、と啄木を引き合いに述べているところ等はおもしろいのですが、それ以上のものはないかと。はっきり言ってお勧めしかねます。