ある夜を境に地球を何か大きな界面が包みこみ、夜空からは星が姿を消す。包み込まれた地球とその外の宇宙空間との間では時間の経過に1億倍の差が生まれた。地球人が1年を数える間に、外側の世界では1億年が経過していくのだ。この巨大な時間差を利用して人類は、火星に原初な生命を打ち込み、やがてそこを植民惑星に育てることにした。そして進化した火星人類が地球に降り立ち…。
地球の近未来の姿を空前絶後の想像力で描く、壮大なSF作品の上巻。地球と外世界の巨大な時間差を利用して、我らの世代が生きているうちに遠大な未来から火星植民者の子孫がやってくるという物語に、幻惑・魅惑・驚愕させられるストーリーです。
まだ上巻を読み終えたところですが、本書が与えてくれるその興奮たるや相当なもので、物語の行く先を見るのが待ちきれない強い思いがあります。
さらに詳細な展開については下巻のレビューに譲ることとして、ここではなんといっても日本語翻訳者の素晴らしいの一言に尽きる訳文に触れておこうと思います。
巨大なホラ話である英語原著の味わいとは実際には比較していませんが、ともかく読みやすく、流麗で品位ある日本語文に魅了されます。その見事な訳文が読み手の私をぐいぐいと引っ張ってくれ、このSFがこれほど素敵な日本語の書き手に出会えたことをとても強く喜びたい、そんな気にさせてくれるのです。
調べてみたら、私がこの訳者・茂木健に出会うのはこれが初めてではありませんでした。
今から4年前、「
指紋を発見した男―ヘンリー・フォールズと犯罪科学捜査の夜明け」というノンフィクションの無類の面白さを日本語で教えてくれたのがこの訳者だったのです。
この訳者の手による翻訳本であれば、ジャンルを問わず二度三度と手にしたい。そんな気にさせられる日本語文です。