過去から未来へと動く「今」に視点を置いたA系列の時間と,年表のように過去から未来までを一望に見下ろすB系列の時間とに時間を分けて,時間の本質はA系列にあってしかもA系列は矛盾するがゆえに,時間は実在しない,というのがマクダガートの時間論らしい。これを正確かつ明瞭に解説する本書の前半まではとてもエキサイティングに読めた。
しかしマクダガードの議論の欠点を指摘し,著者の持論を展開する後半では,その興奮は持続しなかった。著者のきわめて緻密な議論にわたしの粗雑な頭が着いていかなかった,ということもあるだろう。だが,それ以上に,著者の説を構成する新語が気に入らないのだ。
A系列とB系列が入れ子構造になっていることを説明する際に用いられる「時間のそのつど性」「時間のとりあえず性」,A系列はじつは系列でないことを説明する際の「成る」。
時間の正体は関係性であるという発想には興味を惹かれるが,美しくない新語を駆使して緻密に記述された考えは,真理のもつであろうシンプルさや迫力に欠ける気がして,苦労して追い続ける意欲が持続しなかった。
ほかのレビューアーは5つ星をつけているから,緻密な頭の人には最期まで面白いのかもしれない。値段を考えれば,前半だけでもおすすめできます。