イギリスの哲学者マクタガートのA,B,C三系列の時間分類を縦糸とし、相対性理論、量子力学のなかで現れる時間性あるいはエントロピー増大の法則といった知見を横糸として紡ぎながら、ついには「時間の起源」に迫ろうという物語である。
時間のルーツをたどる旅を記述したとも言える本書の内容のうち、時間生成前の導入部は私のような凡人にとって非常に啓発的で興味深いものであった。特に「量子力学的世界では時間を含めた物理量が存在しない」とか、「相対性理論上、時間と空間の関係はちょうど実数と虚数の関係にあたる」などの個所には、無知をさらけ出すようで恥ずかしいが、感心させられた。
ただし、この本のクライマックスである時間生成の段になると、話がだんだんに怪しくなってくる印象を強く持った。すなわち、「自然選択の圧力が、機械から自由意志を持つ存在へと、生命を進化させた。」だとか「生きる意志は進化の過程の中から生まれた」などの記述はフィクションというより著者のメルヘンではないかと思わせるものであった。本書がせっかく「時間の起源」という魅力的な主題に迫っているので、もう少し論を熟成させてから、われわれ凡人に示してほしかった、少し残念な気がする。