編者です。読者の便宜のため、目次を転載します。
序文 「ツァーリとカイザーの狭間で ―文化圏としての東欧―」 高野史緒
オーストリア 「ハーベムス・パーパム(新教皇万歳)」 ヘルムート・W・モンマース/識名章喜訳
ルーマニア 「私と犬」 オナ・フランツ/住谷春也・訳
「女性成功者」 ロクサーナ・ブルンチェアヌ/住谷春也・訳
ベラルーシ 「ブリャハ」 アンドレイ・フェダレンカ/越野剛・訳
チェコ 「もうひとつの街」 ミハル・アイヴァス/阿部賢一・訳
スロヴァキア「三つの色」 シチェファン・フスリツァ/木村英明・訳
「カウントダウン」 シチェファン・フスリツァ/木村英明・訳
ポーランド 「時間はだれも待ってくれない」 ミハウ・ストゥドニャレク/小椋彩・訳
東ドイツ 「労働者階級の手にあるインターネット」 アンゲラ&カールハインツ・シュタインミュラー/西塔玲司・訳
ハンガリー 「盛雲(シェンユン)、庭園に隠れる者」 ダルヴァシ・ラースロー/鵜戸聡・訳
ラトヴィア 「アスコルディーネの愛─ダウガワ河幻想─」 ヤーニス・エインフェルズ/黒沢歩・訳
セルビア 「列車」 ゾラン・ジヴコヴィチ/山崎信一・訳
解説 「東欧の幽霊には足がある?」 沼野光義
あとがき 高野史緒
確かに、口を半開きにして待っていればそこに咬まなくても飲みこめる甘いお菓子を入れてくれるような意味での「面白い」作品は一つもありません。子供の頃には飲めなかったブラックコーヒーのようなものかも。しかし日本語圏の読者の「読む才能」は元来非常に高く、外国文学に対する知見、勘の鋭さは世界でも有数のものです。内外の文学研究者各氏は、これほど誠実でレベルの高い翻訳が広範囲にわたってなされ、それが読まれる国は他にないと言いますよね(デイヴィッド・ダムロッシュ氏によると、アメリカの全出版物における外国文学の比率は約2%)。
座して甘い蜜を待つ活字読みなど、日本には実はそれほど多くはないはず。実際、本書に対する読者の反応は様々なれど、各人の読解力は非常に高いです。
2011年末の時点で増刷が決まりました。日本の読者の多くが「噛みごたえのある読書」を望んでいればこそのことでしょう。さらに多くの方々に、苦みと歯ごたえと深い味わいの喜びを取り戻していただければと願っています。