毎日時間があっという間に過ぎていくと思っていると、実は本当に時間が早く過ぎるようになってしまっていました。この世界の時間が妖精の国へと流れ出てしまうために時間がなくなってしまい、また時間が永遠に変化しないはずの妖精の国では入ってきた時間のせいで時の流れが生じてしたのです。
妖精の国に時間が流れ込んでいる場所を見つけそれを止めることがこの物語の中心です。またそれと平行してアイルランドに生き続ける妖精伝説や音楽のことが語られます。時間の流出という目に見えない事件の解決を楽しみながらアイルランドという国を理解できるすばらしい構成です。
上巻では話がどのように展開するのか読めないので期待がふくらみました。下巻では事件を解決させながら先祖にまつわる謎を解き、主人公の少年がアイルランド人としての自分を再確認します。話をこじんまりと上手にまとめたと言えるでしょう。期待以上の満足感は得られませんでしたが、すべてが納まるべきところに納まった感じがしました。
特別何がおもしろいというわけでもないのに、すぐに読み進めてしまうほど読みやすい本です。ごく普通の日常生活が描かれているだけなのに優しさが感じられるのは、作者がアイルランドを愛しているからなのかもしれません。作者の温かい想いが詰まっているのでしょう。古くからのアイルランドの言い伝えや人々の生活における音楽の大切さ、また目に浮かぶような美しい自然が感じ取れます。