素晴らしいCDである。二村さんが、このCDの前に出した『音楽にできること』も素晴らしいが、このCDは、それ以上の内容である。このCDで聴く二村英仁氏のヴァイオリンの音には、過剰な甘美さは全く無い。しかもそれで居て、演奏者の内面を反映したであろう人間的な暖かさと力強さが溢れて居る。
ヴィターリのシャコンヌなども素晴らしいが、作品として、このCDで注目されるべきは、二村さんが、楽譜を発掘したクラインの子守歌であろう。クラインは、第二次大戦中、(死因は不明だが)収容所で他界した悲劇的な作曲家である。そのクラインの子守歌に対する二村さんの思ひ入れには、非常に深い物が有る様で、このクラインの子守歌の後に、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番が収められてゐるのは、二村さんが、この素晴らしいバッハを、クラインに捧げる意味であったのだろう。−−そのクラインの子守歌と、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番が収められたこのCDを、音楽を愛する人々に推薦する。
(西岡昌紀・内科医/広島に原爆が投下されて61年目の日に)