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しかし,著者は「わかりやすく」するために,多くのまちがいを書いてしまうことで知られています。本書にも,事実誤認としかいいようがない記述が非常に多く見られます。(あえて「非常に多く」と書きます。)
さすがに,著者がこれらすべてを誤認したとは考えられません。また,読者や世論を誤導する悪意をもって書いたとも考えられません。おそらくは,何とかわかりやすくしようという善意の努力のうちに,非本質的なことを省こうとして,まちがって本質的な内容を省いてしまったのでしょう。意図の善悪は別としても,結果として「誤りが多い」といわれてもしょうがないのが残念です。
本書の記述を読んで,どこが誤りで,どこがこじつけなのか,きちんと判定できる専門家と,国際会計基準などを手許において記述の正確さを確認しながら読み進めることができる少数の人をのぞいて,読むのはお推めできません。文中,意見にわたる部分も,クレディビリティに疑問符がつきます。
そういう判定を一般読者に求めるのは無理なので,本来は誰かがきちんと糺しておくべきです。できれば,このレベルのまちがいは,出版社が出版前にチェックするべきだったと思います。ほかの専門家がチェックしていれば,おそらく出版されることはなかったでしょう。
また、日本のメディアは、「国際標準」と言われると無条件に評価する体質があるので、新書という普及版で本書が存在していることは、意義のあることだと思う。
ただし、連結会計についての論考は、「○○グループで決算書をつくるが、○○グループという株式は売っていない」というお茶の間レベルで、専門家とはいえないような雑駁な議論である。
時価会計については、その制度が持つ問題点を明らかにしている。
本書の議論には、賛同するところが多々ある。
ただし、「だから原価会計(簿価会計)が良い」ということには全くならないのに、本書では幾分飛躍して、時価会計の問題点が原価会計の良さに直結している。
「昔に戻れ」という議論ではなく、現行時価会計の問題点を改善した、精度の高い時価会計について、精緻な議論をすることが、最重要だと思うが、そこへの示唆は含まれていない。
時価会計を考える入門書として、さらっと読めばよいでしょう。
新書であるから分かりやすさを重視したのだろう。なにか安っぽさを感じた。
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