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時代がつくる「狂気」 精神医療と社会 (朝日選書 825)
 
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時代がつくる「狂気」 精神医療と社会 (朝日選書 825) [単行本]

芹沢 一也
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

近代は精神病者を「確立」してきた時代。かつては病者は共同体の中で祈祷等での治癒を目指したのに、監察あるいは収容され、また宗教者は精神鑑定の対象になっていった。狐憑きから現代のノイローゼ、心の病、自殺、病者たちの社会参加まで、多様な事例に7人の研究者たちが迫り、犯罪と精神病をめぐって積極的に発言している芹沢一也が総括する。

内容(「BOOK」データベースより)

いま、精神医療が身近なものになってきた。誰もが、心の病、精神の病と無関係ではいられない。そんな時代を迎えている。では、なぜそうなったのか。患う人は本当に増えているのか。それとも精神の病や精神医療が変化したのか。精神医療は、その時代の、政治や法制度、文化や風俗、民俗や宗教、社会やメディア、人びとの意識、そして社会運動がつくりあげてきた。それはある意味、各時代の観念が凝縮した姿でもある。かつて精神の病とはどういうものであり、人びとはそれをどのように扱ってきたのか。狐憑き、滝行といった民間治療、私宅監置、精神鑑定、ノイローゼやうつ、自殺など、近現代の精神医療に関わる歴史的・社会的事例を紹介し、ではいま精神医療の現場でどういう試みや考え方が始まっているか、自殺をどうとらえるか、複雑で複合的な精神医療をめぐる諸問題に、新進気鋭の各学問分野の専門家が挑む。

登録情報

  • 単行本: 320ページ
  • 出版社: 朝日新聞社 (2007/7/10)
  • ISBN-10: 4022599251
  • ISBN-13: 978-4022599254
  • 発売日: 2007/7/10
  • 商品の寸法: 18.8 x 12.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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日本の精神医療の実態をひのもとにさらした書物としては、古くは大熊一夫の『ルポ精神病棟』があり、同じ著者による『精神病院を捨てたイタリア捨てない日本』は、世界的な脱施設化の潮流のなかで、日本の精神医療がおかれている特異な状況を明らかにしている。

それらと比較した本書の特徴は、社会学、歴史学などの分野を横断した書き手が、精神疾患概念の変遷や、患者の処遇などに焦点をあてることで、時代を映す鏡としての精神医療を通覧できるようにしている点である。近代に入って成立した、病気を患者の存在のありかたに転化する<存在>としての疾病観は、病気を周囲との関係をも含めて捉えかつ一時的なものとみる<状態>としての疾病観に較べて、患者を苦しめていることは疑いなく、この点の指摘は深い。本書の編者芹沢一也にはほかに『狂気と犯罪ーーーなぜ日本は世界一の精神病国家になったのか』があり、世界的に見て群を抜いておおいわが国の精神科病床数(全病床の3分の1をしめる!)が、どのような経緯や疾病感をもってここまで増えたのか、統計や著名な精神科医の言葉をしめしながら解説しており、あわせて読むとより理解が深まる。

また、より軽妙な筆致で書かれた読み物としては、織田淳太郎の『精神医療に葬られた人びとーーー潜入ルポ社会的入院』もあり、一般向け。ただし、ルポというには精神医療の暗部にふみこんでおらず、長期入院患者の苦悩と絶望にはせまりきれていない。長期入院患者の心情を本当に理解するには、一年くらいは入院生活に甘んじる必要があっただろう。

関連書を通読して感じたのは、患者がどのようによばれているか、そこにすでに、その国の患者がおかれた状況がうかびでるということである。6ケ月の通院で、障害者の認定がでる日本と、患者を組合員とよび起業さえ支援するイタリア。どちらの国が人間的配慮にすぐれているかはあきらかだ。イタリアの精神医療を映画化した『人生ここにあり(自由こそ治療)』のなかで、No Work.No Life.のプラカードをかかげた女性をみた。これが、患者の本当の魂の叫びと思う。

これに較べれば、長期入院患者の一郎さんが、一生病院ですごすことをのぞんでいるという物語をつむいでいる『精神医療に葬られた人びと』は、傍観者のファンタジーにおわっているし、患者を精神障害者とひとくくりにすることに何の疑問も呈してない本書にも限界がある。

それは思考を停止させるラベリングだという告発があれば、星5つつけられたのに残念な書物だ。
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By モチヅキ VINE™ メンバー
形式:単行本
 1959〜81年生まれの8人の男女の歴史学・社会学・宗教学・人類学の研究者(大学院生も含む)やジャーナリスト(患者会を組織)が、学際的に日本の精神医療を問題化した、2007年刊行の本。日本の精神医療は、個人の内面の素因に基づく「存在」の病という理解に基づく近代科学の立場から、外部との関係に基づく「状態」の病という理解に基づく前近代的な「癒しの共同体」を批判したが、戦前には精神病院の建設は進まず、代わりに私宅監置制度という形で治療なき公的管理が行われた。当時は向精神薬も未開発で、精神病患者は、問題行動の原因、国民の質を低下させる要因でしかなかった。戦後、精神医療は精神病院に一元化され、同時に国家の強権に代わって、社会的な宗教統制・犯罪予防の役割を担うことを、世論から期待される。しかしそれは精神医療の限界をも露呈することになり、1970年代以降、精神病院の開放化・脱施設化、ノーマライゼーションが提唱された。同時に、ノイローゼという総称から多様な心身相関の視点に基づく診断名への細分化、OA化に伴う一般人のメンタルヘルス問題の顕在化が見られ、日常生活の精神医学化が進行している。患者たちも自身の経験を社会に発信する運動を模索し始めた。しかし他方で、地域精神医療はいまだ未発達であり、開放化になじまない患者の収容は精神病院に忌避されるようになった。更に、精神鑑定によって刑事政策との関係が切れない精神医学にとって、保安処分の是非は未解決の問題である。また患者の実存に医師がどこまで踏み込むか、という倫理的な問いも未解決のままである。著者たちはこうした歴史を前提として、やや抽象的だが、精神医療の意義と限界の見極め、前近代の「癒しの共同体」の再評価、当事者の試行錯誤の真摯な再検討の必要性を説いている。鋭い問題提起の書として、お勧め。

            
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