マチャアキも62歳、髪も白くなり、往年の高音の伸びはありませんが、ハートフルな「忘れもの」を世に出してくれたのは嬉しい限りです。人生の年輪を重ねた今だからこそ、人の心を打つのでしょう。♪あの頃のトランクは いつしか色褪せて どこか僕に似ている♪ 歌詞が素晴らしいですし、切々とした歌唱が涙を誘います。声の温かみと哀愁は、昔も今も変わっていません。その個性が唯一無二だからこそ素晴らしいのですが。
GSのエッセンスをこれでもかと盛り込んだ「サイケなハート」を聴くと、あっという間に40年前にタイムスリップさせてもらえました。サウンド、歌詞、当時の雰囲気をまざまざと再現したかのような楽曲でした。挿入されるセリフの粋なこと。拍手、拍手です。
このCD『時の忘れ物』は、リアルタイムで堺正章の歌唱を聴いてきた者にとって嬉しい贈り物でした。1974年にNHK『みんなのうた』で歌われた「北風小僧の寒太郎」のセルフ・カヴァーはただただ懐かしかったです。
まるでマチャアキの心情を吐露したかのような「娘へ」もよかったです。秋元康が紡ぎだす人生の1ページは、多くの父親の気持ちを代弁しているかのようです。
ドーナツ盤で聴いていた「街の灯り」は、旧友との再会のようでした。あの頃の情景まで浮かんでくる曲でしたので、昔のファンにとって有難い配慮です。
1971年の「さらば恋人」も同様です。北山修作詞、筒美京平作曲とで作り出した当時の大ヒットの魅力は今も健在です。歌手マチャアキの素晴らしさが光った名曲です。
ラストの「She」は、エルヴィス・コステロ同様、声の温かみが魅力です。全盛期のような輝きはなくても経てきた人生の重みが声に表れています。人生の年輪を感じさせる味わいとはこの歌唱を言うようです。