震災の何日か後に立教新座高校のホームページにアクセスして読んだ渡辺憲司校長のメッセージに、私は涙を流した。惨憺たる状況にあってもそれでも「海を見よ」というメッセージに、強く心を動かされた。そしてこんな先生に学びたかったと思った。それから3ヶ月して本が出ていた。読み進めると、その感動がフラッシュバックされる(巻頭に例のメッセージが強い文字で収録されている)。と同時に、著者の、あのメッセージとは別の、何と言うかゆとりを持った教養人の側面にとても好感がもて、新鮮な文体にどんどん引き込まれていった。専門らしい松尾芭蕉等の古典文学解説も興味深く読んだ。そして、「優しく「なぜ?」と聞けばよかった」で始まる最後の章がまた素晴らしい。渡辺校長にも教師生活の最初に負った「心の傷」があり、それがこの先生の思いの原点となっていったことがよくわかる。しみじみとしたいい文章である。1冊通した読後感は素晴らしく快い。最初の卒業メッセージと本の最後が見事につながるのだ。ここには物語がある。著者の40年間の教師としての信条が結実した、知性と情の物語がある。18歳の君へとあるが、これは大人にこそその感動が味わえる本だ。