ピエール・クレマンティ演じるマルセルの、銀歯ばっかりの口の中、手放さない仕込み杖、ひょろっとしているのに、次の瞬間何をするのかわからない凶暴さが恐かったですね。凶暴でありつつも、恋する女性には、命がけで依存するような、ナイーブさ・弱々しさもあって、そこがある種の魅力になっているからこそ、異様な恐さが・・・秀逸な人物像だと思いました。
ピエール・クレマンティは、リヴェット監督の『北の橋』にも出演していますが、私はつい最近こちらも観たのに、どの役が彼だったのか、全然思い出せない・・かなりのカメレオン俳優さんなのでしょうか。恐いながらも魅力的なので、他の出演作も探してみたくなりました。
マルセルの登場シーンだけじゃなく、車椅子のシーンや、鈴の音に混じる猫の声(?)などに、ブニュエル作品特有の、香辛料的なホラー要素があって、癖になります。
本作は、女性の性的欲望を描いた作品ですが、表現方法が遠回しであるせいか、カトリーヌ・ドヌーブの美しさが現実味を失うほどずば抜けているせいか、いやらしさは感じませんでした。ドヌーブだけでなく、娼館にいる他の女性たちも、ため息がでるほど美しい!
客たちの性的こだわりにも、嫌悪感よりユーモアを感じます。ブニュエル監督の自伝によると、監督自身にはこうした倒錯趣味はない、とのこと、それも本作にエロスを感じにくい一因かもしれません。
同じブニュエルの自伝によると、監督はパリのリヨン駅内レストランで撮影したかったが、主人から「きっぱり」断られたとか。
また、棺に横たわるドヌーブのシーンの前には、ミサのシーンがあったのに、当時の検閲のせいでカットされ残念だった、とのこと。
謎の小箱の中身については、特に女性から「何が入っているのか?」さんざん質問された、らしいのですが、「こっちもさっぱりわからない」から「何でも、お好きなように」と答えていた、とのことでした。