日本において、アルジェリアに関しては良くも悪くもフランス側の視点から入って来る情報量が圧倒的に多い。
フランスへの”移民”としてのアルジェリア人を描くものは多いけれども、日本人の私たちは余程積極的にならないとアルジェリア人視点の考えを知る事は出来ない。
そういう意味では、この作品は、無論小説というフィルターを通してではあるが、裸のアルジェリアを知る事が出来る数少ない優れた媒体だと思う。
アルジェリアでは人種が混在しているだけに、アラブ人でありながら青い目を持った白人の様に見える主人公の様な存在も、普通に存在する。
イスラムとキリストという宗教の対立だけでなく、目に見える”人種”の壁と差別は、アメリカのそれとはまた違う意味を持ち、残酷でもある。
この作品は、凄惨なアルジェリアという国の歴史を背景にしてもいるのだけれども、硬い本では決してない。
少年から晩年にかけての1人の男性の数奇な人生譚であり、とても面白い。
長編ではあるけれども、読み始めるとその訳文の流麗さも手伝い、一気に引き込まれてしまう。
非常にアラブ的と思える、日本人には相容れない激しさもあるにはあるけれども、非常に魅惑的な作品であった。