この本(JTB出版版の単行本)を書店で眼にするまでは実相寺監督が鉄道マニアだとは夢にも思いませんでした。この文庫版は単行本版にはあった列車の写真が大幅にカットされていて鉄道ファン以外の人が読むにはより不親切な造りになっています。そのような本を何ゆえにお勧めするかというと『ブンコのおまけ』として収録されている「ウルトラマンの聖地、砧の円谷プロよ永遠なれ!」というエッセイをぜひ読んでいただきたいからです。氏の亡くなる前年の2005年に円谷プロは本社機能を世田谷区砧から同区八幡山に移転、旧社屋は怪獣倉庫として残ることにはなりましたがそれに対する氏の思いがつづられています。さらに円谷プロは経営難から身売り、合理化によって旧社屋は完全に解体されてしまいました。氏の死去はまことに残念でしたが旧社屋が完全になくなってしまったことを見ずにすんだことだけはある意味よかったのかなぁ、と思うしだいです。短いエッセイですが円谷作品に思い入れのあるむきには涙なくしては読むことができないのではないかと思います。