1921年(大正10年,有名なバーデン・バーデンにおける永田鉄山以下3名の会合)以降1941年(昭和16年,太平洋戦争開戦)までの約20年間に関し、紆余曲折はあるものの戦争に突き進む日本陸軍の姿を、中枢にいた“統制派”の4名(永田鉄山、石原莞爾、武藤章、田中新一)を軸に克明に追うもの。
従来このあたりの歴史叙述はともすれば大臣クラスに焦点を当てたものも多かったが、本書は実際に陸軍省、参謀本部を動かしていた実務部隊の局長、部長、課長レベルの目線で描いているところが目新しい。
上記4名は陸軍軍人のなかで(程度の差はあるが)単なる戦争屋にとどまらず、独自の世界情勢への認識、国家観、戦略観を持ち、政治への関与を押しすすめ、軍事行動を進めた点が際立っており、この意味で陸軍を動かす中心になっていたことが良く分かる。
いずれも統制派のくくりのなかではあるが、各々の認識・判断には微妙というレベルを超える違いがあることが本書では極めて明確に分析してある。特に開戦直前の、武藤・田中の考え方のギャップには改めて認識を新たにした。
一方戦前の軍事関係を読むときいつも考えさせられる点、1。本当に“勝てる戦争”と思って開戦したのか?2。戦争を終結させる目途はあると考えていたのか?(著者は一応“考えていた”とするが)に関しては判然としなかった。
また、
1.やや著者の叙述部分、説明が多く、もう少し(第一次)史料に語らせたほうが良い、と思われたこと、
2.本書を通し、叙述の繰り返しがいくつか見られたこと(もちろん重要な点だからであろうが)
こともあり、星を4にとどめる。