私は特に軍事ものが好きなわけでも、特に詳しいというわけでもない。そのため、本書の読み始めの時点では、初耳の名前が出てきたり、色々と読み進めるのに困難な状況もあった。しかしながら、読み進めていくうちに、日本が戦争に突入し、戦い、そして負けた一連の流れと、特にバブル経済崩壊後の日本の政治、行政、経済の動きが酷似しているところが多くあると思い、ある意味、慄然としながら本書を読み進めた。
日本の近代軍事組織は明治維新以降に海外の列強を真剣に模倣することで、急速に整備された。その過程で、軍部の下に幼年学校、士官学校、大学が整備され日本の富国強兵政策を強烈に推進しようとし、結果、その通りとなった。そして、日清、日露戦争で大勝利を納めその地位は確立され、世界にも有数の軍事力と評されるようになった。ここまでは良かったのだが、その後、日清、日露の成功体験に溺れた軍部は既存勢力となり、組織は硬直化し、官僚主義、学歴主義が蔓延し、陸軍内部、海軍内部、ひいては陸軍と海軍の対立を招き、最後には国益を損ね、明治維新以来培ってきた日本の伝統的軍事力を全て失うこととなった。本書を読むとその過程で起こった様々なできことが見せつけられるようだ。
いつの時代も、エリート組織が自壊する過程では、派閥抗争が改革潰しを行い、良識を持った正当派は追いやられ、一部の無責任なエリート階層の指導部が勝手に暴走して全てをなし崩しにする。本書ではその過程が嫌というほど詳しく述べられている。
日本の将来の道筋はどうあるべきか、またあらざるべきかを真剣に論じたいのであれば、本書を通じて、過去の教訓から学ぶべき点は驚くべきほど多いことが分かる。そして、今のこの日本の状況、太平洋戦争の末期の敗色濃厚な時期の日本によく似ていることも分かる。失われた15年の日本型組織と太平洋戦争末期の日本型組織の一大共通点は、恐らく思考停止ということであろう。