愛知県の師勝町歴史民俗資料館の学芸員である筆者の市橋芳則さんが、昭和30年代の駄菓子屋、理髪店、食料品店、自転車店等を再現されたものがこの本の中で紹介されています。
懐かしい昭和の暮らしの道具や店内が掲載されていますので、その時代を生きた者だけでなく、知らない世代にも当時の生活ぶりがよく分かるでしょう。時計の針が昭和30年代に舞い戻ったようです。
映画『3丁目の夕日』の大ヒットは人々の郷愁を誘いました。ここに収録されている庶民の生活道具というものは時代と共に忘れられていきますし、残ることもありません。それゆえ後世の人が懐かしんだ頃には現物を見つけることができない、というのもよくある話です。
日本人の誰もが高度成長時代に忘れていったものや風習が、ここには生き生きと再現してありました。たかだか、50~60年ほど前のことが、どうしてこうも忘れ去られていくのでしょうか。今から半世紀ほど前の昭和30年頃の生活ってとても懐かしい匂いが漂ってきます。便利な時代になったのは確かです。昔を懐かしんで、アノ頃の生活をしろ、といっても無理な話ですが。
当時の駄菓子屋さんってとても魅力的でしたね。28ページに写真が掲げられています。今からみれば大した商品ではないのに妙に気にかかり、子供達が10円玉を握りしめて買いにいったあの興奮が思いだされます。スマートボールや日光写真、玩具やかき氷、まさしくパラダイスでした。
96ページには当時の買い物かごが数点掲載してありました。竹製や籐製で出来ていたかごは商店街を歩く女性の必需品です。あの頃の商店街の活気までが呼び起こされるようなアイテムの一つでした。