昭和天皇が 終戦直後から サンフランシスコ講和条約にかけての時代に どのような ご自身の外交を展開されたかを活写する一冊である。
終戦時の「天皇」問題は 大きなタブーであり 現在に至るまで公開された資料は少ない様子だ。それでも 年月を経て 段々と公開される資料の一つ一つを著者は丹念に読み解きながら 自身の仮説を打ち立て、更に10年もの年月を経て新しく出てきた資料で それを検証していく著者の作業には大いに感銘を受けた。終戦後の「現代史」を追及することの難しさと 醍醐味の両方を強く感じた。
本書で描かれる終戦後の昭和天皇は 人間宣言を行い 象徴天皇になったシンボルとしての天皇ではない。日本という国、天皇制という制度をいかにして守りながら、当時の世界のパワーバランスの中で 新しい「居場所」を探しぬいた 一人の外交家と言ってよいと思う。
特に 当時のマッカーサー自身が陥っていた パワーゲームの中で いわば彼との共犯関係で 日本の戦後体制を作り上げたという著者の指摘は読んでいて 正直目から鱗が落ちる思いだった。
あらゆる意味で 現代史は重要だが あらゆる意味で タッチーでもある。歴史という分野の持つ難しさと 重要さを再度感じ入った一冊となった。