丹念に様々な資料を読み解いて、ジグゾーパズルをはめ込むようにして、昭和天皇のご意志やお考え、理想と現実が乖離していく様が描かれています。特に第1章に「思想形成」を持ってくることで、その後の一貫した考え方を支えています。皇太子時代のヨーロッパ外遊も素晴らしいご経験になり、それが生涯最良の思い出と言われるほどに憂いのない時代だったのでしょう。
政党政治が機能しなくなり、協調外交路線がなし崩しとなり、満州事変やクーデターなどやがて情報すらもフィルターをかけたものしか伝わらなくなっていく経過がわかります。またご生誕が1901年なので年表や年譜を手元に置くことなく、日本の過去110年間の歴史も追うことができました。
ご崩御の後、居間の机の引き出しから「パリの地下鉄の切符」が出てきたそうで、自分の意志をなかなか示すことのできなかった国家の元首の不自由さを感じました。