この一冊には二・二六事件発生前について三章にわけ、松本清張の視点で解説が加えられている。
・相沢事件
・軍閥の暗闘
・相沢公判
二・二六事件については、陸軍の青年将校たちが政治革新を求めて決起したと伝わっている。
しかし、この本では政財界も陸軍も権力闘争に走り、はたして日本の行く末を考えているのかと疑いたくなる。が、この姿は現代日本そのままという感じがする。
この「昭和史発掘」シリーズにおいて5巻は読みづらい。裁判資料、憲兵隊の調査報告資料があり、その原文を掲載しており、読みこなすのに苦労する。しかしながら、清張の解釈より原典の方が臨場感があり、空気が読め、これはこれで貴重な内容となっている。
この5巻では相沢陸軍中佐が永田鉄山軍務局長を刺殺する事件と陸軍内部の事情、青年将校の動きが述べられている。
相沢中佐が事件を起こした当日、陸軍省内に有末精三少佐がいたことに驚く。有末少佐は終戦時、マッカーサーが厚木に飛来する前の先遣隊を迎える役目を担った情報将校だった。米軍のテンチ工兵大佐を迎え、日本語通訳がフォービアン・バワーズ少佐である。のちにマッカーサーの副官を務め、有末とも懇意になる親日家である。
この5巻には記述がなにのが不思議であり、相沢中佐の上司はハルビンでユダヤ人を救出した樋口季一郎中将である。不思議な人と人のつながりに驚く。
相沢中佐の人間性を中心に取り上げているところに特徴があるが、この相沢中佐、神風連の乱で決起した神官に重なる。家庭においては善き夫であり良きパパである。
私欲を捨て、義に走る姿がだぶってしかたなかった。