本書は、在米の膨大な史料等に実に丹念に当たり、現代史のグレーゾーンを読み解いたものである。太平洋戦争中から終戦、占領、復興期にかけて米国の情報機関が、「心理戦」や「情報戦」を介して日本社会をどう動かしたかを具体的に記している。
著者は、まず米国の情報機関が、軍事的情報収集から総合的に作戦・工作を展開する組織へと発達した経緯に触れる。そして一般市民からは見えにくい心理戦、情報戦のヴェールを剥ぎとりにかかる。心理戦はCIAだけの専売特許ではない。その担い手はさまざまだ。
たとえば、アメリカの声、VOAや合衆国情報サーヴィスUSISを通じて情報を流し、アメリカの大義を説き、情報に接する日本の人々を親米的にするのはプロパガンタ戦と著者は規定する。
当然のことながら、大きな影響力を持つマスコミ操作も心理戦の一分野だ。
さらに、意外なことに、実は、最も効果的なのは留学や交換プログラムなどの人的交流だ。これも中央情報局や合衆国情報局USIAなどアメリカの心理戦担当の情報機関が深く関わっている
米国留学で親米的価値観を植えつけられた人材は、帰国後も米国志向で動く。アメリカにとって格好のエージェントとなる。小泉政権下の経済閣僚にも、そんなタイプの人物がいた。情報機関は、米国の色に染めやすいキーパーソンを虎視眈々と狙っている。
現在、軍事的・政治的決定を下すための世界的な情報戦は、以前にも増して熾烈になっている。膨大な情報を集め、それを分析し、より確かな純度の高い知識、つまり「インテリジェンス」が我が国にも強く求められているのだ。
このように、著者は、現状を概観したうえで、昭和史の謎として、現在も語り継がれている真珠湾攻撃における「ルーズヴェルトの陰謀」説の歴史的検証にも触れている。