今も朝日新聞社の甲子園についての正式発表は「昭和16〜20年 戦争のため大会中止」となっている。
しかし、実際には昭和17年の夏に、一度だけ、大会が行われているという。
本作は、その大会の実像を描いたノンフィクション大作。実際に当時、甲子園でプレーした方々(現在85歳前後)を全国から見つけ出し、彼らの証言やスコアブックをもとに、試合を鮮やかに再現していく。その緻密な描写と迫力は、息をのむほど。正直「よくこんなに調べたなあ」と呆れてしまう。
さらに、この本の肝は、そんな球児たちが、大会後、それぞれどのように戦争に巻き込まれていったかを、しっかりとフォローして書いていること。シベリア抑留、空襲、原爆など、大会後の球児たちが体験した人間ドラマの数々に、涙を禁じ得なかった。
台湾の代表校が出ていることにも驚いた。
本の帯の裏に「傑作ノンフィクション」とあるのは嘘ではない。戦史ノンフィクションに残る名作である。