本書は講談社刊行雑誌『Apache(アパッチ)』〈1977・7/23号〜78・1/23〉に連載されていた作品であり、劇画原作の第一人者・梶原一騎『
巨人の星』と昭和の絵師・上村一夫『
同棲時代』が一度限りのコンビとなって遺した幻の作品である。その昔、講談社のKCマガジンで単行本になって以来絶版となっていた本作であるが、この度多くのリクエストにより、復刊が叶って日の目を見る事ができたのは嬉しいかぎりである。
空襲で亡くなった母の言葉を胸に、戦後の荒廃の中を一分の義を通し逞しく生きる少女・鷹野翔子の物語である。一読して原作者である梶原一騎独特の毒性の強い展開(特に連載当時のこの時期〈俗にいう『
狂気の時代』〉の梶原の暴力描写は凄まじい)と漫画家である上村一夫の持つしっとりとした画風により中和された内容となり、一見文学的な表層を醸し出した雰囲気を漂わせるなんとも不可思議な作品となっている(これが中城健氏だと原作との毒性が倍増となって『
カラテ地獄変』のような凄まじくも蠱惑(こわく)的な作品になってしまうのだが…)。
先にも述べたとおり、この時期の梶原作品は筆が荒れていた時期であったので何を書いても同じような展開になってしまっており、本作も例外ではなく、女性を丸裸にひん剥いての拷問シーンや教護院(注:原作者・梶原氏の原体験の場所)でのリンチシーン(『
カラテ地獄変』)、ネジリン棒、パラシュート部隊、豚小屋の当番見習い(『
あしたのジョー』)、鷹野翔子が投げナイフの使い手として女不良のボスとして君臨する姿は『
愛と誠』の高原由紀であり、物語の要所々々に焼き直しの様子が伺え、お世辞にも良作とは言い難い。
それでも教護院での翔子の恩師である青白き文学青年・矢崎慎之介には、どこか純文学作家になれなかった梶原一騎の理想がこめられた人物像となっており、翔子の父・鷹野壮介にも梶原の父・高森龍夫を彷彿とさせる様子が伺え、原作者・梶原一騎の思いが込められた作品である事には間違いない。
ただ、仔細はわからないが翔子が著名人・財界人などの大物と浮名を流しながら一流の芸者として伸し上がっていく過程で物語が未完になるのは些か残念である。
できれば芸者になってからの翔子のその後も見たかった。