巻頭に書かれた東京都写真美術館長・福原義春氏の「写真が語る昭和の時代」という標題が本書のねらいです。平成の世になって20年、少しずつ昭和が遠くなっていくのは同時代を生きた者にとって何かしら惜別の情を感じます。
写真というものは実に雄弁に被写体の内面まで写しこむことがあります。まして本書に収められている写真は名カメラマンの残した貴重なものばかりですから、物言わぬ写真ですが、撮られた時の状況を見事に伝えるものでした。
モデルの中には鬼籍に入られた方も多いのですが、昭和という時代を生き抜いた証人という感じで眺めていました。写真の状況やモデルの紹介も詳しく、写真と解説とで昭和という時代、正確には戦後の世相を見事に浮かび上がらせていました。
もっとも「昭和」と言いましても戦後の日本からスタートしています。4部に分かれており、「オキュパイド・ジャパン(占領下の日本)の昭和20年代」「ヒーロー・ヒロインの時代 昭和30・40年代パート1」「高度成長期 昭和30・40年代パート2」「オイルショックからバブルへ 昭和50年代以降」という4章に分けられています。
秋山庄太郎、荒木経惟、大竹省二、木村伊兵衛、篠山紀信、ユージン・スミス、土門拳といった素晴らしい写真家の感性のさえをじっくりと味わえる写真集だと思いました。