本書は前半「名将編」がオール讀物掲載分、後半「愚将編」は語り下ろしとある。半藤・保阪両氏等々の座談会は文藝春秋に掲載されたが、「あの戦争になぜ負けたのか」や「昭和陸海軍の失敗」(共に文春新書)になっている。「名将編」では栗林忠道、石原莞爾・永田鉄山、米内光政・山口多聞、山下奉文・武藤章、伊藤整一・小沢治三郎、宮崎繁三郎・小野寺信、今村均・山本五十六の陸海軍の軍人について書かれる。私の尊敬する軍人は今村均大将だ。慈・愛・徳・勇を兼備した本当の軍人であり、優れた軍政能力と、敗戦後の行動と、その温厚な性格で、全く別格の存在である。幼年学校出身ではなく、旧制新発田中学、陸軍士官学校(19期)、陸軍大学主席卒業だ。ご本人著の「今村均回顧録」と「続・今村均回顧録」を是非にお薦めする。当時前線に出されていたマレーの山下奉文、フィリピンの本間雅晴、そしてジャワの今村均という将官はいずれも東條英機に嫌われていた。一方で「愚将編」は服部卓四郎・辻政信、牟田口廉也・瀬島龍三、石川信吾・岡敬純、特攻隊責任者として大西瀧次郎・冨永恭次・菅原通大というお馴染みを挙げる。「責任ある立場の最も無責任極まりない」連中だ。筆頭はやはり服部・辻だろう。軍官僚・現場の指揮官両面とも全く失格の軍人だ。ノモンハンでも南進政策でもこのコンビが組むと最悪の状況だ。また大失敗してもまた中央に復帰させる陸軍能天気人事が、兵士・日本軍・国家を不幸にした。その陰には常に東條英機がいる。東條が服部を重用、服部は辻を重用する構図だ。更に辻が目をかけたのが瀬島だ。東條に物言う人は追われ、東條の前では言いなりになる連中が軍部の主役になったから堪らない。皇軍の最も悪いところを具現する人間が辻政信であり、武勲の魔物に取りつかれた亡者が牟田口廉也だ。東條の威を借りての功名心の強さは尋常でない。海軍でとんでもない「不規弾」(あらぬ方向に飛んでしまう弾)が石川信吾だ。南部仏印進駐、対米戦争に突っ込んだ張本人だ。少しタイムスリップ出来れば彼らを直に見てみたい。