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昭和のエートス
 
 

昭和のエートス [単行本]

内田 樹
5つ星のうち 4.1  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

歴史の進歩と、
科学への信頼と、
民主主義の
全能への夢が、
リアリティを
持った時代

昭和二十年八月十五日という「断絶」を受け入れ、生き抜いてきた〈昭和人〉の規範に則るならば、格差にゆれ、市場原理に翻弄されるいまの日本は、いかなるものに映るだろうか? 〈昭和の精神〉から、わたしたちがいま学ぶべきことはなにか?
生きるうえで必須であったはずの「貧しさに対する共感」のこと、負け方を忘れた日本人のこと、労働とは本来生き延びるための手段であること……。
『「おじさん」的思考』の著者の真骨頂。いまの時代で失われてしまった〈昭和的なるもの〉への痛切なオマージュ。反時代的心象に彩られた、極上のエッセイ集。


一九五〇年代から六〇年代初めまでに日本社会に奇跡的に存在したあの暖かい、緩やかな気分を「昭和的なもの」として私は懐かしく回想する。歴史の進歩と科学への信頼と民主主義の全能への夢がまだリアリティを持つことのできた時代がかつて存在した。そして、存在することを止めた。その息の根を止めることに私たちは間違いなく加担してきた。それゆえに、「昭和的なもの」を回想するとき私はいたたまれない気持ちになる。私は「昭和人」ではないが、その「いたたまれなさ」の感覚だけが「昭和人」たちから私が受け継いだわずかな遺産なのである。【本文より】

内容(「BOOK」データベースより)

歴史の進歩と、科学への信頼と、民主主義の全能への夢が、リアリティを持った時代―いまの時代で失われてしまった“昭和的なるもの”への痛切なオマージュ。反時代的心象に彩られた、極上のエッセイ集。

登録情報

  • 単行本: 289ページ
  • 出版社: バジリコ (2008/11/21)
  • ISBN-10: 4862381189
  • ISBN-13: 978-4862381187
  • 発売日: 2008/11/21
  • 商品の寸法: 19 x 13.4 x 3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.1  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 倒錯委員長 トップ500レビュアー
形式:単行本
本書は内田樹のエッセイ集だ。どうせまたブログ本だろ?と思うなかれ。
本書に収められているのは、さまざまな媒体に氏が寄稿した文章をまと
めているものであって、けしてブログから引っ張ってきたものではない(ま、
本人がブログに再録したものもあるのだが…)。

ここの点には二つのメリットがある。一つは、多様な読者に発信している
ため内田氏本人がブログのいつもの文章よりもいくぶん構えて書いてい
ると思われるところだ。最後に収められた鷲田清一に依頼されたカミュ論
にしろ、他者からの依頼をまっとうしようという使命感が感じられる。いや、
べつにいつもいい加減なこと書き連ねているというわけではないんだけれ
ど。いつもならババッと飛ばしぎみに箇所も、懇切丁寧に説明している。そ
のため一段落も長い。文体が「正装」をしてるといえばいいだろうか。

もう一つは、依頼された原稿であるため、書くネタが他者によってすでに決
まっているということ。人間易きに流れるというもんで、ブログだとどうしても
自分の書きたいこと、書きたい形式、書きたい問いに隔たりができてしまう。
その点依頼主が「内田氏本人以外」だと、いつもとはまた別の視点が楽し
める。内田氏の中に実はあったビーチボーイズへの思想的な恋慕や、白川
静の深遠な知性への畏怖など、普段ブログではあまり書かない(書いたこと
はあるかも?)内容の小論も収められているのだ。

本書のテーマは「昭和」である。内田氏が「昭和人」と定義するのは、敗戦を
十代そこらで経験した人たちのこと。人生の真ん中で「断絶」を経験し、内な
る葛藤を抱いたまま、戦後復興を成し遂げていった彼ら「昭和人」たちへの、
内田氏の尊敬の念は計り知れない。彼らの「エートス」は今や戦後民主主義
という蔑称によってカテゴライズされる遺物としてかろうじて残っているのだろ
うけれど、この本の全編を覆うのはそのような遺物、「いたたまれなさ」への
憧憬に他ならない。
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23 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
内田樹『昭和のエートス』バジリコ

はじめに収録されている「私的昭和人論」が、とても面白かったです。「昭和人」とは、誰か? ひさびさに内田先生の深い論考に出会った気がします(生意気ですみません)。でも本当に。「昭和人」の持つ「いたたまれなさ」の感覚。この論考だけでも、みなさま、お時間のある方は読んでみてください。

「ペット・サウンズの思い出」には、ビーチ・ボーイズをめぐる内田先生の思い出が綴られているのですが、これがびっくり。まさに村上春樹の文章、いやはや、村上さん以上に「村上春樹」っぽい文章で、どちらも大好きなぼくは、なんだかひゃひゃっ、とした気分になります。ひゃひゃっ。

「隠居の愉しみ」には次のような件があります。「大学教師として私が全力で抑え込んでいたものの一つは生まれついての攻撃性である。私が他人を罵倒することをどれほど必死に自制してきたか、その苦しさを想像することは余人には困難であろう。退職後の私の書いた物を読んではじめて、世間の方々は私がどれほど悪逆非道な人間であるかを知ることになる。そのときの人々の驚きを想像するだけで私の心は今からほっこりと暖かいのである。」(234頁)

ああ、内田先生、おそろしや。おそろしや。内田先生の攻撃性が全開な文章を想像して、ぼくは、背筋がひやっとすると同時に、なんでか、楽しみで楽しみで、にやけてしまいます。そしてぼくの心もまた、ほっこりと暖かくなります。生まれついての攻撃性。ぼくの内にもあるのかしらん?
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3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By Ray
形式:単行本|Amazonが確認した購入
知り合いに勧められて手に取った初めての「内田樹」本は、知的な刺激と斬新な視点に溢れていた。

本書はそもそも、作者が2006年か2008年までに様々な媒体に寄稿した作品を集めた本であり、その成り立ちから当然の事ながら、取り上げられるトピックは、鉄腕アトム、団塊の世代、北京オリンピック、ロストジェネレーション、ワーキングプア、高校教育、等、多岐にわたっている。

しかし秀逸なのは、それぞれのトピックや問題点に対する視点・視座である。以下に、ここだけ抜き出したのでは視点の鋭さが伝わらないことを承知の上で、一例を挙げる:

>貧乏は心理問題。「相対劣位にあることから心理的な苦しみを受けることを「貧乏」という。

>私たちが勝負事に熱中するのは、勝つためではなく、「適切な負け方」「意義ある敗北」を習得するためである。

>「やりがいのある仕事」と呼ばれているのは、仕事をしている当の本人がその仕事のもたらす利益の排他的受益者であるような仕事。

>私たちは自分の能力が高く評価されてそこから受益下と言う事実を、他人の能力が低く評価されて利益を失ったというゼロサムモデルに基づいてしか確証する事ができない(私たちは構造的に弱者を必要とする)。

>テレビでよく使われるの「こんなことが許されてよいのでしょうか?」という言葉は、「先取りされた責任放棄」のこと。

事象に対する視点に加えて、それを表現する言葉が鋭い。橋本治の「こねくりまわした」感じとは反対の、正面から「ぶった斬る」感じの文体。言葉というモノがこんなにも鋭利で深くなることに、素直に驚いたとともに、自分が使う言葉が、まだまだ考え抜かれていない、と反省。

久しぶりに、ビジネス関係以外で、知的に刺激を受けた本。若干難しいので万人受けはしないが、読めば世界観が広がる事間違いなし。お勧めです。☆☆☆☆
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