試験中に割れたドリンク瓶の謎について推理する「はらふくるるわざ」、小佐内さんの自転車
盗難事件を発端に、ついに彼女の秘められていた本性が発揮される「孤狼の心」、そして、主役
二人のそれぞれの休日が描かれる、コミック版の原作書き下ろし「小市民の休日」の三編を収録。
「孤狼の心」はハリイ・ケメルマンの
「九マイルは遠すぎる」を範とした作品で、
ささいなできごとを起点に、小刻みな議論をかさね、丹念に選択肢を検討する
ことによって、思いもかけない悪事を暴き出す、という手法が採られています。
議論の過程には、小鳩くんが
モース警部ばりに、容疑者の疑わしさを
パーセンテージで算出するといったお遊びもあり、楽しませてくれます。
しかし読後、より印象に残るのは、暴かれた陰謀よりも、小佐内さんの
「本性」のほうだ、というのが、このシリーズならではの味わいでしょう。
「小市民」になるという利害だけで結びついた「互恵関係」にある小鳩くんと小佐内さんは、
表面上は穏やかですが、水面下では絶えず互いに牽制しあう、スリリングな駆け引きを
しています。
本作では辛うじて二人の関係性の均衡が保たれますが、
『夏期限定トロピカルパフェ事件』になると……。
ともあれ、
『夏期』のほうも、コミック化決定ということらしいので、
今回同様、ぜひオリジナルのエピソードを追加してほしいですね。