原作をさんざん読んだ上で観ました。
宣伝をみたときは全く期待していなかったのですが、映像の美しさも、俳優の演技も、思ったよりずっとよかったと思います。
ただ細かい部分はやはり原作と違って、犬の屍骸を発見する場面など、聡子の性格を示す上で非常に重要な部分が変えられており、三島氏の描く「女性像」という物がきちんと表現されていなかったように思います。また「この世では(もう清顕には)会わない」と尋常ならぬ決心で剃髪したはずの聡子が、最後すすり泣いてしまう場面など、かなり残念な部分もありました。
しかしまあよくあの作品を「映画」という形でここまでまとめたものだと思いますので、概ね評価できるのではないでしょうか。
原作を読んでおられない方に是非お伝えしたいのですが、この作品は2巻、3巻と読み進めていくと、副主人公であった本多の存在が大きくなってゆきます。本多はこの後歳を取り、精神的にも肉体的にもどんどん醜くなります。この作品において一番重要なのは、その本多の醜さと、それぞれの話の中で輝いて生きる主人公との対比によって、美しさとは如何なるものかということを明らかにしているところにあります。そのような観点から見ると、最後若い純粋な友情から、本多が清顕と聡子の面会を嘆願する場面は非常に感動的に思えます。
難解な言葉が多く、量も多いので、読破するには非常に骨が折れますが、素晴らしい作品ですので、この映画をご覧になり興味をもたれたら、是非原作も読まれることをおすすめします。