古川日出男の朗読は以前から聞いていたので、きっとこのCDは人を鈍器で殴るような荒々しさに満ちているのではないか、聞き終わってずたぼろの気持ちにさせられるのではないかと思いながら再生ボタンを押したのですが、そんなことはありませんでした。
まだ赤い傷に誠実により添って歌い希望の先を望もうとしている、そういう朗読だったとおもいます。
聞き終わって呆然とはしていますが、決して嫌な気持ちではありません。
痛みを正しく長い道程をとおって消すことを希求している、その透明なかなしみをそっと手渡されたのだと感じます。
このCDは、震災以前の朗読よりもずっと技巧を削ぎ落としているように聞こえます。
よくきくとテクニックはますます冴えているし、そもそも最初からガンガン攻めてくる朗読なのですが、テーマのために統制されていて、それをそれと意識しないで聞くことが出来ます。
「永別の朝」「無声慟哭」「報告」「青森挽歌」「春と修羅」というこの構成もすばらしい。
真ん中に挟まれたあるギミックを使って録られた「報告」がその鮮やかさを、聞き手に意識させてくれます。
タイトルに入った「春と修羅」は、何も見えない夜の底を目をカッとこじ開けて全力でひた走るような心地がして、この春にこそ聞いてほしいと思う朗読でした。