秋の七草は山上憶良によって遠く万葉集に詠まれている。
一方、春の七草はそれほど周知のことではない。本書はその起源と種類の諸説を追う労作である。
正月七日「七草粥」の材料として、古来用いられてきたはずだが、その起源はいつか。
現在の七種は、1362年頃に書かれた『河海抄』(四辻善成による『源氏物語』の注釈書)の「芹、なづな、御行、はこべら、仏座、すずな、すずしろ、これぞ七種」が初見とされる。栽培野菜の進化途上のセリ。幼時は愛らしいスズナも、後にはペンペン草。わが国の正史が命名を記録したハハコグサ(母子草・御形)。生命力旺盛な越年草ハコベ。数葉の円座がホトケノザ。古事記時代からの栽培野菜スズナ(蕪)。最も多用される野菜スズシロ(大根)。
旧暦の正月という冬枯れの時期に大切な植物であり、神秘な力があったとみられる。だからこそ、五節句の最初「人日」(七日正月)にいただく。
本書は、姉妹編『秋の七草』とともに併せ読むと、植物と関わる日本人の優しい心根がうかがえて、豊かな心になってくる。