しんちゃんから自宅の印象を「じいちゃんの家に少し似ている」と聞き、ぽつり「あまり変わらんものだな」とつぶやく又兵衛。開戦を前に混乱した城下を逃げ惑う住民と反対方向(城)に参集する武士、疲労した兵士たちの野戦食に塩をきかせた握り飯を作る女性たち、そして綿密な考証が伺われる圧倒的にリアルな戦闘描写など、お手軽実写作など足元にも及ばない細部の描き込みが可憐な悲恋物語を力強く支えている。
又兵衛の無骨な暖かさと力強さ、廉姫の一途さ、最後の戦いで見せるひろし&みさえの活躍(特にみさえのシークエンス、大拍手)、そして敵将と対峙したしんちゃんが圧倒的迫力で振り絞る名セリフ、個人的には日本映画史に残るんじゃないか、と思っている。
戦争、歴史などさまざまなテーマを含んでいるが、どれも押し付けがましくない距離感を持って描かれているのが絶妙。野原一家が「お客様」的な立場に置かれるため「しんちゃんが主人公でない」との観方もあると聞くが、しんちゃんは結構出ずっぱりだし、未来から来た一市民のひろしたちが積極的に戦争に関われないのは当然。
悲しい結末の評価は賛否両論あるようだが、タイムスリップものの収束させ方として、ボタンが掛け違っていっても、最後は歴史どおりになる、というセオリーを踏まえたと考えることもできるし、ハッピーエンドだったら、おそらくこれほど好評を得なかっただろう。「クレヨンしんちゃん」という設定があればこそ生まれた名作だと思う。