1930年代。サイレントからトーキーへの過渡期であり、日本映画が一番輝いていた時期を生きた名監督山中貞雄。二十代で戦死、数々の名画を撮りながら現存するフィルムは3本しかないという幻の監督の人生を、甥で映画監督の加藤泰が語る。生誕100年の復刻版ですが、文庫で出すべき貴重な資料と時代の息吹を感じる名作です。
父親は土佐藩の山内容堂に愛された職人。京都に生まれ、京都の映画界に入っていく若き山中貞雄は周囲に愛されつつ「昼行燈」とあだ名されるダメ助監督だった。脚本の上手さから監督になり、仲間たちと新しい映画を作っていく様子が躍動的に描かれています。まったく資料のない状態から綿密に調べ上げた著者の加藤泰も、書き上げた5ヶ月後には亡くなっている、渾身の名作なのです。
小津安二郎や清水宏、稲垣浩など偉大な監督との交流もおもしろい。現存する「百万両の壺」「河内山宗俊」「人情紙芝居」の三本は映画好きなら必ず見るべき感動作品ですが、それ以外の、今では見られない作品の評価も掲載されています。見たくていらいらする!
戦地に行ってもユーモアを忘れない、これが二十代の若者かと信じがたいほど度量の深い人間・山中貞雄に感動すること間違いなしです。ぜひ。