岩波ジュニア新書であることで、大変読みやすく書かれている。
素直に淀川さんの人生を若者に伝えたい気持が、真摯に伝わってくる気持の良い本である。
感動する本、や心に残る本は多々あるが、「気持の良い本」はちょっと久々でうれしくなった。
こういう本に対しては読み手も素直に受け入れるに限る。随所に挿入されている淀川長治の「言葉」に対しても同様である。何も考えずに、ただ受け入れれば良い。
淀川長治は身内の不幸な死を体験し、生死に対しても優しく、かつ、非常に厳しい考えを持っていたようだ。十代の読者がこの本を読むならば、ぜひそういった視点からも淀川長治と会話していただければと思う。
この本の素晴らしいところは、実は非常に具体的な「就職指南」本であること。
自分のなりたい職業につくには、一体どのように行動すればいいのか?を、実体験から語られている。思いを実現するには、どうすればいいのか? 夢を現実にするには、どこから行動すればいいのか? 戦時下であっても、戦後であっても、立ちはだかる障壁を淀川長治はどのように受け入れ、どのように前に進んだのか?
年齢を問わずに、「どのように行動すれば、夢を引き寄せられるのか?」を感じることの出きる上質の一冊である。絵に書いたもちのような不真面目な夢ではなく、就職、働くという現実の世界で、夢を願う、ことへの行動指南書である。
感性、感受性と言うことばがたくさん出てくる。それは氏が映画評論家であったからではなく、感受性を大切にしていたから、映画からたくさんのことを感じることができた。
「僕は死のうと思ってもね、来週また来週といい映画がくるから、
それを見たいと思うから、死ねないんです。」
本の最後近くに氏のこの言葉が載っている。
この一冊は、淀川長治の少年時代を書いたものではなく、生涯「映画少年」であった氏の
話である、と私はそのとき感じ取ることが出来た。