富野由悠季監督が、アニメについて語った本ですが、『映像の原則』というタイトル通り、映画やドラマでも通用する内容であり、舞台演劇やマンガなどでも応用が可能な知見に満ちた一冊だと思います。
画面における上手(かみて)と下手(しもて)の意味やその役割、同じシーンであってもカメラアングルやアップとロングの比率を帰るだけで、見る者の意識はどう変化するか、単純化されたイラストを挟みながら、比較しながら進行する技術論は解りやすいです。ドアを開けて入る、という単純な動作ひとつにも、演出と不可分一体となった方法論があるのだと、目からウロコでした。特に、イマジナリー・ラインについては過去に読んだ技術本の説明よりも、分かりやすく優れていると思います。
この本で書かれたような知識はすでに知っていると言う人もいるかも知れませんが、ランダムな知識としての映像の原則ではなく、富野由悠季監督が映像というものをどう捉え、どう表現すべきかと考え、実行してきた結果生み出されたアニメとの関係性の中で、一本の線として俯瞰できることが重要なのではないでしょうか。手塚治虫や宮崎駿といった天才型に比較すれば必ずしも才能に恵まれたわけではない富野監督が、彼らに伍して戦うために蓄積していったノウハウが再現されているように感じました。
文章はやや生硬でくどいと感じる部分がありますが、逆に富の監督が何を重視し、どこを正しく理解してほしと考えているかの、指標にもなります。本書は改訂版とのことですが、以前の版を読んでいないために比較はできませんが、多少の読みにくさも含めて、富野監督自身のリアルな言葉として語られている感じがするので、私には楽しく読めました。
たぶん、実際のアニメ作品を見ながら、この作品での表現は良くないからこう変えたほうがいい・・という形で、監督から直接注釈を入れられながら説明されれば、もっと解りやすいのでしょう。そこら辺が、動きで見せるアニメーションの表現テクニックを、文章とイラストで説明する事のもどかしさや、限界でもあるのかもしれませんが、それでも本書は拝聴に値する内容だと思います。1800円の内容は、密度から考えればリーズナブルだと思います。