「名勝負セレクション」とあるので当時大相撲を見ていた者としては気になってしまい、1、2巻を買った。買わなきゃよかったと思っている。なんでこれが「名勝負」なの、という取り組みが幅を利かせ、あの一番がなぜないの、という疑問ばかり募ってくる。たとえば、北の富士、貴の花、輪島らが引退する直前のふがいない相撲が収録されている。これらのどこが名勝負なのか。もっといい相撲が沢山あっただろうに。ふてぶてしいほど強かった北の湖や千代の富士は、この1,2巻では負けてばかりいる。一方、朝潮や北天佑、大の国はほとんど勝ち相撲で、当時を知らない人が見たら、北の湖や千代の富士より朝潮や大の国の方がいい力士に思えるだろう。長い相撲は途中を大幅にカットしており、主な力士の大関昇進、横綱昇進、引退前の一番を順につなげたという感じだ。選択の基準が相撲内容と関係ない。たとえば、この第2巻を「ウルフ旋風」と銘打つなら、初優勝した56年初場所の初日からの14連勝をもう少し紹介して欲しい。輪島、若ノ花、隆の里ら強豪に完勝し、北天佑や朝潮に土俵際まで追い詰められながら執念できわどく勝った相撲などだ。あるいは、56年九州場所千秋楽本割で、琴風に寄り立てられながら、俵を背に土俵を半周するようにして最後に首投げと内掛けの合わせわざで浴びせ倒しに破った一番など、執念と相撲カンが冴えた一番だった。そういう一番があってこそ、優勝を決めた一番が生きてくると思うのだが。