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星新一 一〇〇一話をつくった人
 
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星新一 一〇〇一話をつくった人 [単行本]

最相 葉月
5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (29件のカスタマーレビュー)

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第28回(2007年) 日本SF大賞受賞

内容(「BOOK」データベースより)

『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』『人民は弱し 官吏は強し』…文庫の発行部数は三千万部を超え、いまなお愛読されつづける星新一。一〇〇一編のショートショートでネット社会の出現、臓器移植の問題性など「未来」を予見した小説家には封印された「過去」があった。関係者百三十四人への取材と膨大な遺品から謎に満ちた実像に迫る決定版評伝。

登録情報

  • 単行本: 571ページ
  • 出版社: 新潮社 (2007/03)
  • ISBN-10: 410459802X
  • ISBN-13: 978-4104598021
  • 発売日: 2007/03
  • 商品の寸法: 20 x 14 x 4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (29件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 157,122位 (本のベストセラーを見る)
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12 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 「純文学」に立ち向かった「ショートショートの神様」の苦難, 2008/12/17
レビュー対象商品: 星新一 一〇〇一話をつくった人 (単行本)
資料の徹底的な博捜と、関係者への綿密な取材によって、「ショートショートの第一人者」星新一の実像に迫った力作。小学校時代から調査するという念の入れようで (星は長い作文が書けなかったらしい)、飄々・恬淡・奇矯といった表面的なイメージの奥に隠された人気作家の焦燥と苦悩を炙り出している。

星新一の家族関係や特殊な境遇は『人民は弱し 官吏は強し』やエッセイなどで彼自身がしばしば語ってきたが、その中で明かされなかった、異母兄との関係や星製薬の内情などの「秘密」を本書は容赦なく暴いている。

そして「星製薬の御曹司」という肩書きは良きにつけ悪きにつけ、星新一の文筆活動に大きな影響を与えたことが良く分かった。星製薬を潰したという負い目、社長時代に多くの人間に裏切られたことから生じた人間不信が、星の性格に暗い影を落とし、感情表現を省いた独特のクールな文体を生み出した(この点は星自身もある程度、認めていたが)。
逆に、固有名詞を排した無個性の登場人物を描くことで知られる星新一が、実は自分をモデルとした人物を作中に登場させていた、という指摘は新鮮である。星製薬社長としての過去を振り払おうとすればするほど、その影は執拗にまとわりついてくる。そんな皮肉に星新一本人も気がついていたのだろうか。
一方で、彼の毛並みの良さが、キワモノ扱いされていた黎明期の日本SFの地位向上に役立ったという。
当時におけるSFの社会的評価を考える上で貴重な事実発掘と言える。

また戦後日本のSFの創始者である星新一を通じて、日本SF発展史を語っているところも興味深い。従来、この種の「日本SF史」は専ら、黎明期を支えた当事者たちの回顧録によって占められていたので、第三者が複数関係者の証言を突き合わせて客観的に分析した点には大きな意義がある。

しかし何と言っても、本書の白眉は、星新一に対する社会的評価の変化を具体的に明らかにした部分であろう。今では信じられないことだが、デビュー当時の星新一は安部公房と並び称される文壇の新星であった。文壇の長老たちからは「人物が描けていない」などの酷評を受けたものの、若い世代からは、無駄を削ぎ落とした都会的で洗練された文体と核心を衝く卓抜な文明批評が斬新なものとして受け止められた。人間関係の描写に終始する泥臭い旧来の日本文学とは一線を画した、「科学の時代」に相応しい新しい文学として認識されたのである。そして星自身も当初はショートショート専門の作家で終わるつもりは毛頭なかった。

ところがSFの大衆化、量産に伴うマンネリ化(ただし量産は星本人の本意ではなく、ショートショート依頼の殺到と、原稿料の安さが原因)、読者層の低年齢化に伴い、文壇での星新一の評価は下落する。時代の寵児は一転して、文学賞から無縁の存在になった。SF界においてすら「天皇」と祭り上げられつつも、中心的存在ではなくなっていく。酷使された星はアイディアの枯渇に悩まされるが、「ショートショートの第一人者」としての地位を守るため、「ショートショート1001編」を目指して、それでも書き続ける。だが、ようやく達成した空前絶後の偉業も、文壇的には全く評価されなかった。

「親切第一」というサービス精神ゆえに「ショートショートの第一人者」という肩書きに生涯縛られ続けた点に、筆者は手塚治虫との共通点を指摘する。しかし本書を読む限り、手塚との共通点はそれだけに止まらない。ジャンル創始者としての自負、「子供相手の商売」と見下されることへの不満と反発、神格化されつつも人気面で後輩に抜かれていくことへの焦り(星の場合は小松左京・筒井康隆、手塚の場合は石ノ森章太郎・水木しげるなど)・・・筒井への嫉妬、晩年になっても「どうして自分は直木賞をもらえないのか」と愚痴をこぼした、「文学的評価よりも売り上げ」と自己を卑下した、などのエピソードには意外の観があったが、偉大な功績に比して報われるところが少なかった作家であった証左とも言えよう。

私の父はかつて、星新一にサインをもらったことがある。
そのサインの言葉は「想像力を失えば、思想の自由も無意味となる」であった。
本書では「SFなんて文学じゃない」と言う編集者に対して星新一が、
「文学が想像力を否定するものとは知らなかった」と反駁するエピソードが紹介されているが(370頁)、
こうした「純文学」の側からの無理解に、まさしく己の想像力ひとつを武器に立ち向かっていった作家が、星新一だったのである。
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51 人中、44人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 徹底取材と遺品の検証による本格評伝, 2007/4/1
レビュー対象商品: 星新一 一〇〇一話をつくった人 (単行本)
SFにほとんど関心のない人でも、星新一は読んでいるだろう。

星製薬の御曹司であったことや森鴎外の妹の孫であったことなどは、

星自身の「人民は弱し 官吏は強し」あるいは「祖父・小金井良精の記」に詳しい。

しかし、本書はそれらでは明かされなかった、

あるいは星自身が意識してかどうか書かなかった隙間を埋める作業を

遺品や徹底取材によって忠実に行っている。

戦中戦後を生きた一人の昭和の人間としての波乱の生涯、

ショートショートという文学の新ジャンルを開拓しようとした小説家としての苦悩、

文壇における評価の低さ、

SFを牽引したにもかかわらずSF界からも疎外されていく晩年の姿には胸が詰まる。

小松や筒井らをはじめ、鶴見俊輔や初恋の女性、タモリなど多くの関係者の肉声があり、

伝記によって一人の人間の生涯を共に生きるという読書の喜びを久しぶりに堪能した。
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19 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 最相作品のベスト, 2007/5/6
By 
麒麟児 (東京都) - レビューをすべて見る
(VINEメンバー)    (トップ500レビュアー)   
レビュー対象商品: 星新一 一〇〇一話をつくった人 (単行本)
今日でも多くの小中高生に連綿と読み継がれる(しかしその一方で、その成長とともに忘れて去られていくかのような宿命にある)作家星新一氏の評伝。筆者も中学生時代にとり憑かれたように読みまくった時期があるが、本書ではその極めて透徹した作風の裏に隠された痛々しいまでの苦闘や葛藤が個々の作品の成立事情等に即して興味深く語られ、無邪気に読み散らかしていた自らの不明を恥じるとともに、人生一般についても深く考えさせられた。(特に、晩年に至るまで過去の作品に手を入れ続けた氏の姿には、写真から受ける柔和な印象からは想像もできない鬼気迫るものを感じさせられ、胸がつまった。)また、小松左京氏や筒井康隆氏とのそれをはじめとする日本SF界の黎明期の交友(反目)関係や星氏の作品作りの方法(283頁以下、464頁以下)等、貴重な証言も一読の価値あり。
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